「それでも今日は好い日だ」

猫と裁縫と日常の雑記。

不眠症とわ。


さて、私は普段、睡眠薬を常用しています。不眠症で……というと、かなりの割合の人が示す反応というものがあります。
まず1つは「薬に頼っちゃよくないよ」というもの。そしてもう1つは「人間は普通、眠るように出来ているんだから、限界がくれば勝手にカラダが眠るよ」というもの。その他の意見としては、「運動するなりなんなりで、疲れると眠れるんじゃない?」とか、極端な意見としては「眠れなくても死にはしないよ」という人も。
面白いのは、これらがみんな、不眠症は病気ではない、というスタンスの意見だということですよね。
いや、確かに実際、私もそう思ってました。病気ではないと明確に思っていたわけじゃないけれど、薬に頼っちゃよくないとか、そのうち眠れるだろうとか。
でも色々な事実に気が付いてしまったので、最近は言い返すようにしています。
「それでも眠れないのが不眠症なんだよ」と。


「限界がくれば眠れるよ」という意見は、実はこれが当てはまるのは初期段階だけです。いよいよヤバくなると、限界を超えます。
人間が眠るのは、日中の刺激で蓄積した疲労を解消するため。心身ともに。
うまく眠れなくなると、寝る行為そのもので疲れます。これまた心身ともに。なので、疲労を解消するどころか、蓄積していく一方です。
それがどんどん進むと、慢性的な疲労状態になります。頭痛とか目眩とか微熱とか動悸とか。
そんな状態で「運動して疲れれば……」って。限界を超えている人には、無茶な注文ですよね。蓄積する疲労を増やすだけ。


「眠れなくても死なないよ」というけれど。実はこれも嘘なんですよね。不眠が原因で慢性的な疲労状態になると、心臓に負担がかかります。いやホント。これはホント。
実際私は、ソファでおとなしく本を読んでいる状態で、動悸がしました。ちなみに、特に心臓疾患なんかは持ってません。それまで全く意識してなかった心臓の音が急に、「ととととっ」と数秒間だけ早くなるのです。以前にも何度かそれを体験したことはありますが、それは月に150時間とか残業していた頃。
「これはそろそろヤバいな」と自覚した瞬間でした。
そういう症状を経験している人間に「眠れなくても死なないよ」という意見は、何の説得力もありません。
目がずっとしょぼしょぼするとか、時々目眩がするとか、体がだるいとか、昼間に限って眠いとか、それだけなら確かに死にませんが、だって明らかに脈が変になるんだよ?


そしてそこまで疲れていても、眠れないものは眠れないわけで。
色々試しました。
就寝時間を変えてみたり、寝具を変えてみたり、運動をしてみたり、カフェイン断ちをして寝る前にホットミルクを飲んでみたり、市販の睡眠改善薬や漢方を試したり、自己暗示による自律神経刺激法というものも試してみたり。
オソロシイくらいの空振り率。


内科に相談すると、「睡眠薬を処方出来るのは精神・神経科だけです」と言うのです。それが原因で内科的症状が出ても、原因を取り除くための薬は精神科でしか処方出来ない不思議。
今に至るまで1年以上、薬をもらっている精神科のお医者さんは、以前にも書いたように、喫煙マナーに関してはルーズな人ですが、診察初日に私の信頼を勝ち得ました。
自分では、「眠れないんだからしょうがないじゃないか。精神科に行くくらいたいしたことじゃない」と割り切っていたつもりではありますが、多分自分の中に、「薬に頼ること」への罪悪感もあったんでしょう。プラス、そのための薬をもらいに行くところがよりによって精神科だというプレッシャーも。
心の病気を持っている人に対する差別はないつもりですが、実際、自分が受診するとなるとそこはかとないプレッシャーを感じるもの。敷居高いよね。
けれど、それらを先生は初日に払拭してくれたのです。


症状を訴えると、先生はあっさりと「じゃあ睡眠薬を出しましょう」と言いました。やっと眠れると安堵したその時の気持ちを今でも覚えています。
それまでに色々、不眠症については調べていたので、幾つか質問をしてみました。
早い人では30代前半からも始まるという、いわゆるプレ更年期障害というやつなのか、それともずばり鬱病なのか、とか。
そうすると先生がこれまたあっさりと答えたのです。


「それは関係ないでしょう?」
「へ?」
「今現在、あなたは眠れない。じゃあ眠れるようにすればいいじゃありませんか。眠れないことが今一番ツライことなら、それを取り除けばいいじゃありませんか」
「でも、薬に頼るのは良くないかなー、なんて思うんですが」
「痛みが我慢出来ない時に痛み止めを飲む、熱が下がらない時に解熱剤を飲む、アレルギーが出たら抗アレルギー剤を飲む。眠れない時に眠れる薬を飲む。同じじゃありませんか? とくにあなたの場合は、他の自覚症状は無いようですので、それがもし更年期障害だとしても、鬱病だとしても、もっと他の病気だったとしても、出ている症状は不眠だけです。なら、その症状を改善してやるのがあたりまえでしょう?」


仰るとおりデス(なんかすげぇ納得)。
なるほど確かに、不眠症を病気の一部と考えれば、その症状を改善するために薬を飲むのは当たり前だと思えてきます。
どんな病気でも、病気に対する、自分と周囲の理解が必要なんだなぁ。


ちなみに私が使ってる睡眠薬は、超短時間型の入眠剤で、効果が出るのがすごく早いです。
飲んだら15分以内に強い睡魔の波がやってきます。その波に乗り遅れても、更に10分後くらいにはそれより強い波がやってきます。眠れない時でも2〜3番目の波で眠れてしまいます。
ただし、効果時間は長くても2時間程度のようです。短い分、眠気が強く早くやってくるタイプの薬ですが、うっかり眠り損ねて1〜2時間を過ごしてしまうともう効き目が無くなってしまうという不便な側面も(過去何度かやったことがある)。


さて、その薬を飲み始めて1年ちょっと。
最近は、長期的なスパンで見て改善されてきたような気がします。
身体がようやく眠ることを習慣として覚えたような。
仕事で疲れた日なんかは、0時前に眠くなることも稀にあります。「すごい。こんな時間なのに眠い!」と自分でびっくりするくらい。
そもそも、以前のように「身体はすごく眠りたい、脳も休息したいのに、神経だけが妙に過敏になってて、いわゆる頭が冴えた状態で、わずかな眠気すら訪れない」という状態が最近は無くなりました。
飲み始めて1ヶ月くらいで、目眩や動悸は目に見えて改善されたしね。



とりあえず、なんで急にこんなことを書いたのかというと、今日、テレビで「不眠実験」なるものをやっていたからデス。
「眠らないでいたらどうなるか」を知るために「眠っちゃイケナイ状態」をわざわざ自分で設定してたようですが、不眠症の人間からしてみれば何とも腹の立つ実験でした。


眠れるんなら寝ろよ。