「それでも今日は好い日だ」

猫と裁縫と日常の雑記。

ためこみ過ぎ。

読書日記を久しく書いていませんでした。とぎれがちな記憶。
とりあえず、本棚を見てざっと思い出せる限りのものを羅列してみる。


十二国記シリーズ』※『魔性の子』含む現行10冊(小野不由美
職場で流行りました。面白いね、コレ。貪るようにして読みました。
個人的には延王が好きです。あと、楽俊。楽俊イイヨネ。


屍鬼』※全5巻(小野不由美
これも職場での流行。借り物でした。読んだ後に『ポーの一族』を再読したくなる仕様になっています。そしてうっかり、自宅にある文庫版の『ポーの一族』を再読したところ、『屍鬼』の文庫版解説者である宮部みゆきが『ポーの一族』の解説も書いてました。ただ、『屍鬼』での宮部はテンション上がりすぎ。
どす黒くなる作品でしたが、個人的には好きです。


『天使と悪魔』※上中下(ダン・ブラウン
ダ・ヴィンチ・コード』の前作ですが、こっちのほうが面白いんじゃなかろうか。


『花まんま』(朱川湊人
ちょっとセツナイ感じの短編集。この作家さんは初めてですが、好感触。覚えておこう。重松的なニオイかな。


『誘拐』(本田靖春
1963年の「吉展ちゃん誘拐事件」のノンフィクション。読売新聞社の記者だった人が書いてます。
うーん。著者は、なるべく公正にあろうとして書いているんだろうけれど、公正にっていうのはどうなんだろう。いや、もちろん犯人擁護に走っているわけではないけれど。
昭和38年に事件は起こり、40年犯人逮捕、41年死刑確定、46年死刑執行。
服役中、犯人が反省し、悔悟の念を持って、哲学的な思索に耽りながら静かに過ごしたみたいなことが書かれてて、ちょっと眉を顰めた私は心が狭いデスカ。
刑罰を覚悟したら何をやってもいいのかとか、申し訳ないと思えば許されるのかとか。
「迫る刑死を澄明な心境で見据えることが出来るようになっていた」とか書かれても、その澄明な心境とやらを持つまでに犠牲にしたものは何だと問いつめたい気分にさせられるだけなんですよ。そりゃ、時代や生い立ちにも要因はあるかもしれないけれど、「だから可哀想なんだよ、本当は教育さえ受けていれば穏やかな人だったんだよ」と言われても、それを許してしまえば、同じ境遇で真っ当に生きている人たちに失礼ですよね。
ヒューマニズムについて考えた一冊。


『死体は知っている』『死体検死医』(上野正彦)
元東京都監察医だった人が書いた検死の本。法医学系は好きなので、興味深く読めました。ただ、センセイ、2冊の内容が少しかぶってるところあるよ。コレの前に、超B級な『死体の本』(写真入り)とかを読んでいたので、具体的にわかっちゃうあたりがカナシイ。趣味を疑われそうだ。


『トンコ』(雀野日名子
ホラー小説大賞の短編賞受賞作。表題作は、豚の視点から見た物語ということで一風変わった仕上がり。
収録されている『黙契』のほうが好みだったかな。怖くないホラー短編小説、という感じで。
『黙契』は、東京進学した妹と地方赴任になってる兄とのお話。両親を早くに亡くして、2人きりだった兄妹はとても仲が良く、離れて暮らしていても、妹は兄に電話やメールでこまめに近況を伝えてくるのです。明るく頑張っていたはずの妹が突然自殺して……という。
私にも兄がいるので、「兄と妹」という設定には、どうやら弱いようです。『火垂るの墓』とか号泣するしね!


『夜市』(恒川光太郎
こちらは05年にホラー大賞を受賞した作品。単行本の時から気になっていたのですが、昨年文庫化されたのでようやく読みました。
ちょっと硬質なニュアンスのある文章です。どこか違和感のある世界観を綺麗にまとめているというか。ゼリーみたい。


『乙女なげやり』『人生激場』(三浦しをん
どちらもエッセイ集。自他共に認める腐女子の三浦氏。この人の日常は馬鹿っぽくていいなぁ、と肩肘張らずに読める。
っていうか馬鹿だな、と時々思うけれど、似たようなことを自分もやっていたりするから、彼女のエッセイは30代文系女子には危険。でも、弟の目の前でドア開けたままトイレに入るのはヨクナイと思う。


『密やかな結晶』(小川洋子
記憶が狩られる島のお話。それにしても小川氏の作品はいつも、「ちょっとした背徳」が潜んでる。そして、いつもどこかに「喪失」がある。
そんな風に、作家さんって何かひとつキーワードがある人が多いよね。


さまよう刃』(東野圭吾
小川氏が「背徳」と「喪失」をキーワードとしてるなら、東野氏は「記憶」と「復讐」だろうか。
これは東野氏らしい作品の1つではあると思うけれど、刑事のキャラクターは練り込み不足かなー、なんてちょっと上から目線(笑)。


『さがしもの』(角田光代
「本」をテーマにした短編集。面白くなくはなかったけれど、あまり印象に残らなかった……。


スカイ・イクリプス』(森博嗣
スカイ・クロラ』シリーズの外伝的短編集。本編での隙間を埋めてくれるけれど……やっぱり森氏は長編のほうがイイヨ(謎)。


ノスタルジア』(埜田杳)
前述の腐女子三浦しをん氏が解説で絶賛。でもこれは確かに、その気持ちはわかる。別に、「そういう話」ではないんだけど、そういう妄想を抱かせてくれる小説なんだと思う。キャラ萌えってほど狙っていなくて、悪くない。


『空の中』(有川浩
……そしてこっちは「キャラ萌え」を狙ってる。「大人のラノベ」だとか「ラノベで出すんじゃもったいないから一般レーベルで」とのことだったけれど、間違いなくラノベの王道的な文章。エンターティメントとして、ストーリーだけを抽出するなら面白いです。ただ、キャラクター狙いすぎ。


『町長選挙』(奥田英朗
精神科医・伊良部先生シリーズの文庫化第3弾。今回のは、ちょっと時事問題(?)を取り上げてますね。ニュースで話題になったアノヒトたちが伊良部先生に診察を受けたらどうなるのか的な。
伊良部先生のように生きられたら人生楽しいんだろうなーと思う、そんな、癒しの小説。かもしれない。


『ララピポ』(奥田英朗
連作短編……?と思ったら、群像長編というらしい。対人恐怖症のライターやAVスカウトマンなんかが主人公になるちょっと底辺感(笑)のある作品でした。奥田氏はこういうダメ人間をコミカルに書くのが上手だなぁ。
それになんといっても、奥田氏の文章は読みやすい。リズムがいい。


納棺夫日記(増補改訂版)』(青木新門
今話題(やや遅れ気味)の「おくりびと」の原案となった本。文庫化されていたので入手してみました。
後半は宗教的なニュアンスが濃いのが意外でした。親鸞とか歎異抄とか言われても……ちょっとムズカシイ。仏教的な死生観に興味が無い人にはお勧めしないかも?


『子どもたちは夜と遊ぶ』※上下(辻村深月
ややあざとい感はうっすらと漂うものの、面白く読めた作品でした。海外留学をかけた論文コンクールに正体不明の天才が応募して……という導入。孤独でクールな秀才学生の過去や、殺人事件が絡んでいくというもの。上下巻とも厚みのある本ですが、読むのにはそんなに時間がかかりませんでした。時間がかからなかったということは、文章も悪くないということ。まぁ、「……ぇー?」なところが無いわけじゃないけど(笑)。
総じて悪くないという印象を受けました(また上から目線)。


『浄土』(町田康
これすげぇ(笑)。なんてパンクなんだ。つげ義春を読んでいるみたいだ。
短編集なんですが、収録作品に『本音街』というのがあります。本音街では誰もが本音しか言いません。喫茶店に入った時の様子を一部抜粋。

兄ちゃんはさらに、「ケーキを食べたらどうですか」と言った。
「なんで食べて欲しいのですか」
「お客がたくさん来ると思って張りきってたくさん作ったのですが、ぜんぜんお客が来ないのです。売れ残ったら捨てることになって銭を損するので少しでも売りたいのです」と兄ちゃんは情けない顔をした。食べてやろうかと思って聞いた。
「そのケーキはうまいのですか」
「まずいです」
「なんでまずいのですか」
「僕は正式にケーキ作りを習ったことがなく我流で無茶苦茶してますし、材料もいいものを使うと銭が儲からないので粗悪品を使っているからです」
「僕はまずいケーキは食べたくありません」

すげぇ……行きてぇ、本音街(笑)。
この本は、お勧めです。超お勧めです。