「それでも今日は好い日だ」

猫と裁縫と日常の雑記。

Peace/War

外れた宝くじは実家に置いてきた。

計画通りなら今頃マンション購入のための契約書を見つめているか、仕事を辞めるための契約書を見つめているかのどちらかだったはずだけれど、世の中はそうそううまくいかない。億万長者になる夢は延期になった。

きっと猫パワーが足りなかったのだと思う。あの恩知らずめが。

他力本願どころか猫力に頼ろうとしてる時点で、確実に本気度は疑われる。

 

閑話休題

 

以前やっていたオンラインゲームでは、ピースモードとウォーモードというのがあった。PCでのゲームなので、対象物(または対象人物)をクリックする必要が時折生じるが、ウォーモードでクリックするとそれは攻撃にあたる。街の中など、戦闘行為が禁止されているような場所で攻撃行為をすると、どこからともなく警備員が飛んできて、攻撃した犯人を斧で殺すのだ。警備員(Guard)が来る範囲・来ない範囲というのがあって、ゲーム内では「圏内」「圏外」と言っていた。

PK(プレイヤーキラー)が出るようなエリアに行く時には、咄嗟に「Guard!」と叫べるようにSayマクロを登録していた。PK可能エリアでも、ガード圏内であれば、被害者が叫べば来てくれたのだ。斧を持った、頼もしい鎧の騎士が。

 

そんなことを最近、駅の構内や地下街でよく思い出す。

 

傘の横持ちをしてる奴。あれはウォーモードだ。Guard!ここに悪者がいるぞ!

完全な横持ちではないけれど、傘の持ち手と開く部分との境目あたりを持って、斜め後ろに傘を突き出す奴。あれもウォーモードだ。Guard!きてくれ!殺される!

傘ばかりじゃない。

バッグを肩にかけて小脇に挟んでる女性。あれも、脇に挟んでるだけならまだしも、だいたいの女性は脇から背後にやることで、自分の前面にバッグが来ないようにしている(前面に来ると邪魔だから)。固めの素材で出来たバッグなら、それも立派なウォーモードだ。Guard!Guard!Bank(マクロミス)

 

街の中には鈍器使いもいる。

クソ重いキャリーバッグ。背負ってる当の本人の体よりも分厚いリュックサック。小脇に抱える小さなバッグと同じ感覚で肩から背中にまわされているトートバッグ。

とりわけ、混んでるバスの中やエレベーターの中で、リュックやバッグを肩から下ろさないやつは、人間として信用ができない。

 

人間は主な感覚器官が前面を向いているせいで、背中側の感覚が鈍い。例えば目の前10cmのところに見知らぬ他人がいたら嫌なものだが、背中10cmのところに他人がいても(正面に比べれば)それほど嫌ではない。

そんなところへ、厚さ20cmを越えるリュックサックがあったなら。そりゃ自分は気にならないだろう。エレベーターの中でだって、ぶつかって初めてそこに壁があることに気付くんだろう。人間にさえ、ぶつかって初めて気付くんだろう。そもそも、ぶつかってさえ気付かない奴もいる。無意識に攻撃する、これもウォーモードだ。Guard!

 

リュックやバッグを足元に置く、少なくとも、自分の体の前面にまわす、そんなことにすら気が回らない人間は公共の場所に出てきてはいけない。

 

先日、パン屋でトレイ片手にパンを選んでいたら、後ろから肩をどつかれた。「はぁ!?」と思って振り返ったら、A4サイズのバッグ(固めのエナメル素材)を脇から背中側に(自分の邪魔にならないように)斜め後ろにかけて、パンを選んでる女性がいた。

Guard!攻撃を受けている!きてくれ!

 

哀しいかな、現代日本では、斧を持った鎧の騎士が現れることはなかった。