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「それでも今日は好い日だ」

猫と裁縫と日常の雑記。

魍魎の……


男は匣を持つてゐる。
大層大事さうに膝に乗せてゐる。
時折匣に話しかけたりする。

壺や花瓶でも入つてゐるのか。
何とも手頃な善い匣である。
男は時折笑つたりもする。

「にゃあ」
匣の中から声がした。
鈴でも転がすやうな猫の声だった。

「誰にも云はないでくださいまし」
男はさう云ふと匣の蓋を持ち上げ、こちらに向けて中を見せた。

匣の中には太つた猫がみつしりと入つてゐた。

それを見ると匣の猫も
むくりと顔を上げ、
「にゃあ、」
と云つた。

ああ、怒つている。