「それでも今日は好い日だ」

猫と裁縫と日常の雑記。

むかーしむかしのぉ、ことじゃったぁ……。

4年前、我が家には可愛い子猫がいました。

(注:今もこの猫はいます)


クロさんが空輸されてきたのは、4年前のちょうど今頃。
ちっちゃくて細くて、でも尻尾だけがひょろひょろと長くて、猫風邪からの結膜炎で目もろくに開いていない、涙と鼻水でなんだかぐちょぐちょした子猫でした。毛色もよくわからなかったし。
避妊手術の予約をいれて検査につれていったら、なんだか血液検査の数値が思わしくなく、肝臓が悪いのかもしれないとか、それなら麻酔はキケンだからとか、なんだか色々言われたのを覚えています。
当時、まだ飼い始めてほんの数ヶ月。
ああ、この子はひょっとしたら長く生きられないのかもしれないなぁと、ぼんやり思いました。縁あって一緒に暮らし始めたけれど、縁が薄かったのかもしれないなぁと。でも、数ヶ月でお別れしたんじゃ、忘れっぽい私の記憶にあまり残らないかもしれない、それはこの猫にとってとても可哀想なことなんじゃないだろうか、そんなことを思ったものです。


そのひと月後に、
「ん、だいじょぶですね。じゃ予定通り避妊手術しましょう」
って、お医者さんにあっさり言われるまで。


手術の後は、あのオモシロ可愛いエリザベスカラーもつけず(傷口を全く気にしなかったため)、帰宅直後から走り回り、飼い主をかじり、もりもりと餌を食べ、もりもりとウンチョスをし……。
そうして、暮らし始めてから4年。

立派な大猫になりました(要ダイエット)。


そう、クロさんの誕生日はおそらく7月頭くらいだろうと計算されているんですが、私にとっては彼女が空輸されてきた11月15日のほうが記憶に残っています。
動物病院で一通りの検査を終えてから渡すと言われて、友人と病院で待ち合わせたあの日、みぞれになるんじゃないかというくらい冷たい雨が降っていたことも。
いったいこの子は長く生きられるのかしらんという疑問は、今はもう持つことはありません。
そもそも、上の写真は飼い主を抱きしめてる映像じゃなくて、飼い主の腕を捕獲してかじっているところだし。
飼い主を流血させるような猫が短命のはずはない。超元気。昨夜も1人運動会開催してたし。夜中の3時過ぎに。


先日は、私が自分の夕食を作っていたら、なんだか珍しく足元にきて甘えてました。にゃーにゃーと鳴いて足元をぐるぐるし、邪魔だと言われつつも足元に座り込んでみたり。
クロさんは普段、ほぼカリカリオンリーなので、台所からクロさんの食事が出てくることはありません。それに、その時、クロさんのご飯の皿にはちゃんとカリカリが残っていたのです。だから食事の催促ということはなさそう。
ふふ、甘えてるのね、でも飼い主は今、料理で忙しくてよ。なんて思っていたらそれは罠でした。
足元にちょこんとお座りして、クロさんはそっと尻尾を動かすのです。
私の歩く先に。
ボウルを取ろうと一歩踏み出した時、私の足の裏に、細長く柔らかい毛皮の感触が。
「に゛ゃ!!」
一声叫んで逃げてみせるクロさん。
「あ。ごめん」
「に゛ゃーーーっ!! にゃにゃにゃっ! にゃ−−っ!?」
戻ってきて文句を言うクロさん。
「……悪かったってば。ごめん」
「にゃーー。にゃーーっ!」
「(ブチ)うるさいな! だいたいおまえがあんなところに尻尾置くから悪いんだろ!?」
「にゃにゃー! にゃー!」
「さてはわざとかっ!? おまえ、わざとだろ! 自分からやったくせに被害者ヅラすんな!」
「に゛ゃーっ!(がぶ)」
「あ。いて。やったな!(がし)」


まぁ、つまり、もう子猫じゃなくなった猫とその飼い主は意外と仲良くやってるってことです。