「それでも今日は好い日だ」

猫と裁縫と日常の雑記。

有言実行。

自分にプレッシャーをかけた通り、今回は読書日記です。
私見のみで構成されていますので、ここで「今ひとつ」的な扱いをされていても良書はあると思います。逆に、ここで「おもしろかった!」と書かれてても、「ぇー?」と思われる方もたくさんいるかと思います。
それが個人ブログの妙味だと思ってください。
前回の読書日記から後だから……7〜10月までの読書分かな。
合間に漫画読んだり、以前読んだ本を再読したりもしてたので、そう数は多くないですケド。


『四十回のまばたき』重松清
割と初期の作品。「らしさ」と「らしくなさ」がほどよく入り交じった印象。
最近の、よく本屋さんや出版社がつける、「重松氏らしいキャッチコピー」とはちょっと馴染まない一編かも。


『ビタミンF』重松清
これは、「らしい」ね。『四十回のまばたき』から8年と考えると、この変遷がオモシロイ。
駅前にロータリーのあるニュータウン、その舞台をもっとも活かす作家の一人だと思う。


『有頂天家族』森見登美彦
毛玉が云々と紹介に書いてあって、ナニソレ?と思いながら買った1冊。森見作品は初体験。
これ、京都在住の人が読んだら別の意味ですげーおもしろいんだろうなー。
文章に癖があるといわれる森見氏ですが、私は割と好きかも。これはおもしろかった。痛快な作品。


『四畳半神話体系』森見登美彦
上記で森見作品が気になったのでこれも購入。イイヨネ、小津。
荒唐無稽さがおもしろい一編でした。


FUTON中島京子
143回直木賞受賞。……の文字につられて買ってみた。うん、着眼点がオモシロイ。
田山花袋の『蒲団』とあわせて読むとちょっとにやりとする(花袋のほうはまだ前半しか読んでないけど)。
でも、読まなくても、そして知らなくても意外とイケそう。
たとえば、田山花袋の『蒲団』は日本文学史の上では、いわゆる私小説の走りとされていて、あまり評価は高くないようなのです(よく知らないケド)。それがあまりに作家本人の境遇に似たことが書かれているので、本当に私小説なのか、それともあくまでフィクションとして書いたのか、前者だとしたらちょっとはしたないし、後者だとしたらちょっと盛り上がりに欠ける、みたいな。
で、家庭を持つ男の視線で書かれた『蒲団』という作品に対し、『FUTON』は、アメリカ人の日本文学(田山花袋専門)研究者による『蒲団の打ち直し』という作中小説を合間にはさみながら、その研究者、教え子の日系女子学生、その女子学生の曾祖父、曾祖父のもとにくるヘルパー等々の、過去と現在の恋愛模様が描かれてます。
FUTON』は『蒲団』のパロディではないけれど、『蒲団』がなければ『FUTON』はなかった。そう考えると形としては新しいのではないかと。


『均ちゃんの失踪』中島京子
作家が気になったら他の本も買ってみるmy定石。
うーん……特記すべきことはないかな。


『卵の緒』瀬尾まいこ
これはおもしろかった。瀬尾氏の作品はまだ数冊しか読んでいないけれど、たとえば、マシュマロのように柔らかな痛みとか、哀しいことって意外とありふれてるし、大事だと思ってるものに限って結局どうにもできなくなったりするよねみたいな、そのへんのもわもわした感じを、なんかこう卵の殻に入ったプリンのようにして描き出そうとしているのが瀬尾氏の特徴なのだとしたら、これはいいと思う。
そして、これがデビュー作というのにちょっと驚き。


『感染』仙川環
ストーリーはおもしろい。でも、文章はあと一歩練れてない。
なんだろうなぁ。キャラクターの肉付け不足かな。
サスペンスの出来としては悪くないんだけど……。


『シュガータイム』小川洋子
小川氏は好きな作家の一人です。1990年の作品ということで、まだ色々なものをそぎ落とす前の、肉の残った状態のように思える。
「肉」が残ってるのがいいのか無くしたほうがいいのかは論ずるべきところではないけれど、最近の小川作品からは、骨の白さのような美しさを印象として受けるのに対して、この作品はまだ肉が残った美しさがあるなと思えたのデス。


『麻酔』渡辺淳一
この人、いつもあまりにも男性目線だから、好きじゃないんだけど……。題材そのものに興味を感じたので、買ってみました。古本屋で見つけたしね。
うーん……もうちょっと観察眼がホシイよね……。


『初夜』林真理子
これは短編集なんですが、昔、この本が新刊として出た頃(2002年)、本屋さんで帯がついていて、確かその帯でちょっとだけ紹介されていたのが表題作の「初夜」でした。で、その紹介が気になって、短編だし、それだけ立ち読みしたんです。それがおもしろかった。
ただ、もともと林作品はあまり興味がなく、単行本で1400円を出してまで欲しい本ではなかったので、いつか文庫落ちしたら買おうかなくらいに思ってました。
文庫が出てるかどうかは知りませんが、単行本が古本屋で105円だったので購入。
……で、表題作以外はどの短編も不倫が出てくる。おもしろかったのは表題作だけ。
個人の好みにもよるけれど、やっぱり林作品はあまり馴染まないなぁ。


『空想お料理読本』ケンタロウ×柳田理科雄
アニメに出てくる料理、略して「アニめし」をおいしく再現、という狙いはいい。
ハクション大魔王のハンバーグとか、ギャートルズのマンモスの骨付き肉とか、私の世代の心をくすぐるメニューも悪くない。
ただ、もう少し写真かせめてイラストが多ければもっとよかった。