「それでも今日は好い日だ」

猫と裁縫と日常の雑記。

唖然。

オシゴト絡みではないのですが、先月の仕事中に、小耳に挟んだ不可思議な会話を。
私の席の後ろのほうで、学生バイトのオンナノコが社員の女性に話しかけていました。
どうやら、別のバイトのオトコノコが、倉庫整理中に怪我をしてしまったようです。荷物が上から落ちてきちゃったとか。たいそうな怪我ではないらしいのが幸い。
とりあえず、救急箱を使って別室で手当てしたけれど、ちょうど落ちてきた荷物は額の、髪の生え際あたりにぶつかったらしく、皮膚が裂けちゃってるから病院に行ったほうがいいかも、という話。


なるほど、そのあたりは裂けやすいし、頭部だから傷のわりに出血多いしね。病院に行ったほうがアンシンかもねー。……なんて思いながら私は黙々と仕事を続けていました。


社「このあたりの病院ってどこだっけ。遠いようならタクシー代は会社で出すけど」
バ「あ。えーとですね、ここのビルに病院入ってるんですよ」


そういえば、ビル内に幾つか病院あったな。なんだっけ、内科と婦人科と……あとひとつ……。


バ「○○皮膚科なんですけど、そこでいいですかね」
社「皮膚科?」


……皮膚科?
待って。怪我したのよね? 頭の上に荷物が落ちてきて額が裂けちゃって、出血してるから病院いったほうがいいかもねっていう外傷よね? なんで皮膚科?


バ「とりあえず連れていってきます」
社「あ。はーい。よろしくー」


え。止めないの? ていうか、なんで皮膚科? 皮膚が裂けてるから皮膚科? 違うだろ。
え。ウケ狙い?


数分後。バイトのオンナノコが戻ってきました。


バ「なんか、病院いったら、受付の段階で『うちじゃないよ』って言われたんですけど……皮膚科じゃないんですかね」
社「うーん。皮膚科じゃないんだねー」


……え。社員さんのほうもマジだったの?


バ「とすると……どこでしょう? 頭だから……脳神経外科?」
社「整形外科かな? あ、でも頭なら脳神経外科なのかな」


……いや。そうじゃねえだろ。
外科だろ
まず外科にいって、その傷は縫う必要があるか否かを判断してもらって、その上でもし頭を強く打ってるようだったら、その外科の先生がなんらかの判断を下してくれるんじゃないのか。血ぃだらだら流した状態で整形外科とか脳神経外科行っても、「まず外科行ってくれ」って言われるんじゃないのか。


バ「脳神経外科ってこのへんありましたっけ? あ、道路の向こうに総合病院がありましたよね」
社「あそこ、脳神経外科入ってるのかな。整形外科があればそれでもいいかな」


外科は
いや、普通、総合病院には外科も整形外科も入ってるけど。なぜ誰も外科って言わないの?
っていうか、なんで最初に皮膚科行ったの!?
その後、別の社員さんも混じって、それでも、脳神経外科がどうの、整形外科がどうの、電話かけて聞いてみようかとか、ずっと論議していました。
ビル内の皮膚科の受付の人は、とりあえず驚いたことでしょう。でも「うちじゃないよ」って教えてくれるなら、「それ、外科だよ」って教えてあげて欲しかった。
……いや、普通わかるから教えないのか。でも、わからないから皮膚科行っちゃったんじゃないのかな……。
怪我して血が出てるなら外科って、それ一般常識じゃないの?


揺らぐ。
あの会社にいると、「え、それって常識じゃないの?」と思うことがありすぎる。自分の「一般常識」が他人のそれと違うことに気付かされて、そのボーダーが揺らぐ。
でも、怪我したら外科行くのは常識だよね…っ!? 明らかに骨を折ったとか、明らかに頭を激しく打った後、目の焦点があわないとか意識がもうろうとしているとかじゃなければ、まず外科だよね!?


ちなみに議論に十数分を要し(その間、社員の人がどこぞの病院に電話をかけて聞いていた。電話の相手に『それ外科ですよ』と言われたらしく、「外科だってー」とか言いながら病院の場所を確認していた)、ようやく、怪我をしたバイト君は外科に連れていってもらい、縫ったほうが早いよねと言われて2針くらい縫ったらしいです。


……時々、本気で唖然とします。
「ここの人たち、まじで?」と。