「それでも今日は好い日だ」

猫と裁縫と日常の雑記。

連休ですね。

ゴールデンウィークですね。
一応、人並みにオヤスミなんですが、GW明けの5/6に校了を控えているので、なんだか落ち着かない連休です。
しかもそういうスケジュールだと、5/7から10日ほど休みになるので、GWに有り難みはない。


そんなわけで久々の読書日記。
前回書いた時に、3ヶ月ごとくらいには書かないと忘れちゃうよねなんて言ってたくせに。
開き直って、記憶に残っている本だけを抜き出して書いてみることに。



『遥かなる水の音』(村山由佳

村山氏の作品を全部読んだわけではないけれど、今まで数冊読んだ中での印象を言えば、この人の文章は平易。読みやすくもあり、それが故に物足りない側面も。
だから、多分作者が描き出そうとしたものが、余計な装飾なしに伝わるんだと思う。描き出そうとしたものが魅力的なものなら魅力的になるし、平凡なものなら平凡に。
そういった意味では、予想外の面白さというものはないのかもしれない。けれど、今回のこの作品は好みだった。
主人公の弟が亡くなり、弟の恋人であるゲイの男性や、弟の友人たちとともに旅をするというストーリーを、登場人物それぞれの視点で描いた群像小説という体裁で書いている。
同氏の作品で「星々の舟」という連作短編も好みだったことを思えば、単に私が連作短編や群像小説というものを好むのかもしれないけれど、今作の、ちょっと特異な情況が淡々とした文章でシンプルに描き出されているのは良かったと思う。



『キリング・サークル』(アンドリュー・パイパー)

母親が新聞かなんかの新刊広告欄を見て、「買ってきてー」と言ったので買ってついでに読んで持っていった本のひとつ。
いやー、読みにくかった。翻訳ものだということを抜きにしても読みにくい。
ジョナサン・キャロルにもどことなく似た、「あらすじを読めば魅力的なんだけれど……」というパターン。いざ読み始めると、装飾過多の文章に閉口。個人の好みかもしれないけれど、装飾多めの文章を更に翻訳で読むというのは色々とハードルが多いね。原語で読めれば好みなのかもしれない。でも、翻訳が悪いという印象ではなかった。
ただ、文章を抜きにしても、エピソード構成がややわかりにくい感は否めない。
ちなみに母は、心折れて読了できませんでした。読みにくすぎる、というのが彼女の感想。



『消された一家 北九州・連続監禁殺人事件』(豊田正義)

平成14年に発覚した実際の事件のノンフィクション。一家全員を監禁虐待して支配し、家族同士を殺し合わせたという衝撃的な事件を扱ったもので、確か、最高裁の判決はまだ出てないはず。
ノンフィクションもので題材が云々と言うつもりはない。けれど、ものには書き方ってものがあるだろう……。
酸鼻をきわめる事件をノンフィクションとして描くと、どうしても残酷な場面はあるし、事件の性質からしても、尾籠な方面にまで描写が及ぶのは仕方がないとは思う。でも、書き方ってものがあるだろう。大事なことなので二度言いました。
あと、視点が偏っている。もちろん、事件の関係者で生存している人が犯人含めて3人しかいないのだから、取材も限られてくるだろうけれど、加害者の1人であり被害者でもある女性の側だけに終始しているのは、せっかくここまで取材しておきながらもったいないと思わざるを得ない。
ノンフィクションとして、事件の概要はわかるけれど、加害者、とくに主犯の男の人となりは見えてこない。残念ながら、このノンフィクションは、犯罪を描いてはいるけれど、人間は描いていない。
……っていうか、あれかな。あまり文章が上手ではないのかな(ストレートに失礼)。



『黒い報告書』(「週刊新潮」編集部)

表紙に書かれていた執筆陣のラインナップだけで衝動買い(笑)。
だって、重松清ビートたけし中村うさぎ岩井志麻子内田春菊……と並べば気になりませんか。週刊新潮に連載されていた、「時代のエロスと犯罪を濃厚に描いた」ものの傑作選だそうです。
実際にあった事件をもとに、それを少々脚色して読み物にしたもの。濡れ場をメインにするあたりは、週刊新潮らしさを感じますが(笑)、これはまぁ、なんていうか……そうね、週刊新潮かな、という感じ。
買って後悔はしなかったけれど、買わなくても後悔はなかったかも。



『名短編、ここにあり』(北村薫宮部みゆき編)
収録は、半村良黒井千次小松左京城山三郎吉村昭吉行淳之介山口瞳多岐川恭戸板康二松本清張井上靖円地文子
こういうアンソロジーはマイナーな短編を読めるので割と好きです。
ただ、あれだね。小松左京はさすがだね。



『新釈 遠野物語』(井上ひさし
肩肘張らずに読めて面白かったです。遠野物語をベースにしつつパロディではない。これは確かに「新釈」だなぁと妙に納得しました。柳田国男が読んだら、大喜びするんじゃなかろうか。
そういえば、『吉里吉里人』探してるんだよな。

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あと、書物ではないけれど、読書関連あれこれ。
先日、DSを買ったことはブログにも書きましたが、同時に「DS文学全集」も買いました(これも書いたか)。
読み心地は悪くないです。
私の買ったDSがLLなので、少々重いけれど、新書を持っていると思えばまぁこんなものです。片手で持てないほどの重さじゃないし。
そしてLLは画面が大きいので、文章が読みやすいですね。ページを捲るのは十字キーやLRボタンに設定できるので、文庫本を持つようにして縦に持ったまま、片手でページ操作ができるのはありがたい。もちろんタッチパネルでも出来ます。
ページを捲るときに「ぱらり……」という紙の音がしたり、読んでる途中でしおりを挟めたり、読み終わったら10点満点での点数付けができたり、読了した本はリストの背表紙の色が変わったりと、イイカンジです。


コストパフォーマンスの点でも、DSさえ持っていれば、2500円程度で100冊の日本文学が読めるのだから悪くない。もちろん、既読のものも多いけれど、再読・再々読するのも楽しいものです。
中学生の時に感想文のために読んだ芥川龍之介を大人の視点で再読できるしね。
移動時間が長い時や、実家に帰省する時なんかに、これとアダプターさえ持っていけば、本を100冊持っていくのと同じことだと考えると、すばらしいコストパフォーマンスですよ。


羅生門」「杜子春」「或阿呆の一生」「カインの末裔」「外科室」「走れメロス」「坊ちゃん」などを再読。
「檸檬」「桜の花の満開の下」などは初めて読みました。
あと、浅学にして知らなかった海野十三(うんの・じゅうざ)の探偵もの「蠅男」なぞ。日本SFの始祖の1人とも言われているらしいですね。戦時中には軍事科学小説も書いていたとか。時代感を感じる奇天烈なSFでした。まさに「空想科学小説」。


そういった、知らなかった作家のプロフィールなんかも収録されているし、独特の文体で少々わかりにくい感のある「外科室」なんかも、「あらすじ」で現代文で解説されているので、DS便利デス。
古本屋なんかで数十円で売っていても本は買わないかもしれないけれど、こうやって収録されていれば100冊全部読んでみようかという気にもなる。
蟹工船」もそういえば読んでなかったなとか、久々に宮沢賢治読んでみようかとか、「山月記」って教科書に載ってたよなとか、夢は膨らみます。
一方、夢野久作とか折口信夫といったややマニアックな作家や、先の海野十三押川春浪(戦前の作家。冒険小説の草分け的存在らしい。知らなかった)といった、本当にマニアックな作家まで並んでいて、どんな作品だろうというより先に、DS文学全集の編者のセンスが気になります。
ところでどうして、川端康成入ってないの。
でも読書好きなら、このソフトは買いですよ。続編出して欲しいくらい。