「それでも今日は好い日だ」

猫と裁縫と日常の雑記。

微笑みの国のオンニャノコ。

先日、友人とタイ料理屋に行ってきました。
休日出勤の前日だったのに意外と元気だなと思ったのはともかくとして。
そのお店に行ったのは2回目。日本語があまり上手じゃないタイ人のママさんが1人でやっているこぢんまりとしたお店です。
タイの家庭料理や屋台で出されるような料理、タイカレーなんかがメニューに揃ってます。
どれもスパイシーで、独特のハーブが利いていて、特に自家製ソーセージが絶品なんですが、先日は、友人2人と私の計3人が料理よりもお店のオンニャノコに夢中でした。


以前は1人でやってたはずのママさんが、ホール人員を1人雇ったみたいなのです。
顔立ちだけを見れば日本人かと見まごう雰囲気でしたが(ママさんは結構濃い目の顔立ち)、「予約した○○です」と声をかけると、返事の日本語がたどたどしい。年の頃は20才前後。色白で丸顔、肩につくかつかないかくらいの黒髪で、一重まぶたの可愛らしい娘さんでした。
留学生かしらーと思いつつ、友人たちと飲み物をオーダーすると、時折聞き取れないらしく(店内に場違いなオッサンたちがいて非常に騒がしかった。焼き鳥居酒屋じゃねーっつの)、何度か聞き返しつつオーダーを確認してくれます。
そして最後に、たどたどしく、「ありガとごザイまシタ」。
それがカワイイ!
「……ちょ、あの子カワイイね」
「うん、超カワイイ。ヤバイ」
「萌えるね」
3人の意見も一致。


その後、飲み物が運ばれ、食べ物のオーダー。
「これと、これと……」
メニューは全て写真付き、タイ語と英語とカタカナでメニュー名が書かれ、料理説明はちょっと不慣れな日本語で書かれています。
とはいえ、カタカナを読むにもどう発音していいのかわからないので(笑)、メニューは全て指差し確認です。
「あとサラダも欲しいね。でもこのお店のメニューは引っかけ問題だから……」
友人の1人が呟くように、そのお店のメニューには、いわゆる「辛いヨ度」が表示されていません。大抵、そういったエスニックまたはアジアン系のお店では、唐辛子マークなどで辛さの度合いが示されているものですが、このお店では、料理説明に「少し辛いです」とか「結構辛いです」という曖昧な表現がされているだけ。しかも、「辛いです」表記がないものも、辛くないわけじゃないのです。
「サラダは舌が休憩できるものがいいよね。これって辛いのかな……」
別の友人が呟きながらメニューを指さすと、可愛らしいホール係さんが、たどたどしい日本語で話しかけてくれます。
「それ、辛いデス。海老、味、カライ。それ、この中では、一番に?カライです」
「あ。そうなんだー。じゃこっちは?」
「そっちは、海老より、辛くないデス。でも、海老も、カライけど、おいしい」
結局、青パパイヤのサラダを頼みます。
「※★〜*◇ですネ(現地発音のため我々には聞き取れず)。ありガとごザイまシタ」
かわいー。超かわいー。やべー。(3人とも中身はオッサン)


そう。造作が可愛らしいというだけでなく、客の手元の飲み物チェックや、テーブルの灰皿チェック、一生懸命日本語を練習してるんだろうなという姿勢、はにかんだ様な微笑み、その全てが好ましいのです。
気働きが出来る、というのでしょうか。
最近の言い方だと、「空気読める」というのでしょうか。
あんな女の子がホールをやっているなら、多少料理が出るのが遅くても(ママさん1人で全部やるから)、客は不機嫌になりません。


その後、せっかくだからおつまみだけでなくカレーもオーダーしようと、メニューを熟読する我々。
「これ辛いかな。『結構辛いです』って書いてある(笑)」
「普通に辛いのはいいけどさー。この店、ほんとに辛い時はヤバイくらい辛いからねー」
「辛いって、むしろツライ?みたいな(笑)」
「『結構ツライです』とか『ツラさと酸味が楽しめます』とか、妙にハマるのがオカシイよね(笑)」
そんな、馬鹿っぽい話をしながらメニューを見ていると、空気を読んで彼女が近づいてきます。
カレーのことを訊ねると、ちょっと小首を傾げながらも真剣に返答してくれる彼女。
「それ、辛い、です。カライ……ツライ? んー……イチバン、カラいです。ツライ?」
……我々の会話を聞いていたんだろうか(笑)。
「カライ、でいいんだよ。じゃあ、これは一番カライのね。こっちはコレより辛くない?」
「そっち、も、ちょとカライ」
「でもいいや、これでお願いします」
「はい、ありガとごザイまシタ(にっこり)」
かわゆすー!(3人ともめろりん)


22時半をまわったあたりで、残念ながら彼女の退勤時刻になったようです。どこかで着替えてきた後、ふとテーブルの上が気になったようで、私服になってからもささっと片付けて奥に持っていってから、客に会釈しつつ店を出るという気働きを見せます。
その後、エレベーターホールでエレベーターを待っている彼女(たまたま我々の席が出入口に近かった)。その彼女に気軽に話しかけるどこぞの若い男。
その姿をふと目にして、飲み物片手に気に掛ける我々。
「ナンパされてる?」
「変な男についてっちゃだめー!」
「いや、ちょっとイイカンジに話してる。トモダチかな」
「むしろ、他の店(雑居ビルだった)で働いてる顔なじみ的な?」
「そうか、なら地下鉄駅までは一緒にいっていいな」
「でも家は教えちゃだめだよね。そこまでついていくのは許さん」
「護衛だけね。あくまで護衛だけ」
中身オッサンな30代女性が3人で女の子を守りたい気分になったのでした。


料理はもちろん美味しかったんですが、何よりもその女の子が可愛らしく、各々の仕事でやや荒んでいた私たちの心も癒されました。
また行こう。