「それでも今日は好い日だ」

猫と裁縫と日常の雑記。

女流作家シリーズ。

「おおきくなりません」(白倉由美

いわゆる、ジュニア小説の類かな。自分をある程度モデルにして書いたと思われる内容ですが、その割に、嫌味なリアリティが無くて読みやすかったです。フシギちゃんなのはいいんだけれど、超常現象も含めていいんだろうか……。まぁいいか。白倉氏の漫画家時代の作品は、「贖いの聖者」と「グレーテルの記憶」の2冊しか読んでいませんが、ちょっと味付け違うような……と思ったら、「贖いの聖者」のほうは、大塚英志氏原作でした。てへ。


「怪談集 花月夜綺譚」(岩井志麻子恩田陸/花衣沙久羅/加門七海/島村洋子/霜島ケイ/藤水名子/藤木稟森奈津子山崎洋子

女性作家が幻想的に紡ぐ、恐怖と悲劇の競作集と銘打たれた短編集。美しく怖い十話、だそうで。……ふぅん。……ぇーと、いいんだけどさ……、確かに「怪談」と銘打たれていて、解説でもそう書かれている通り、いわゆるホラーではなく、スプラッタでもなく、「怪談」なのよね。それはわかります。「和風で繊細で、時には美しくある恐怖が(以下略)」と解説されてます。それはわかるけど、なんでみんな、申し合わせたように現代を否定したんだろう。一番新しい時代設定でも昭和の戦後。古いと南北朝時代までさかのぼる。「怪談」ってそう? 編集者がそう説明したのかもしれないけれど、それじゃあまりにも解釈が狭過ぎやしないだろうか。
うーん、アンソロジーなのにバラエティが無い。残念。


空中庭園」(角田光代

ちょっと変わった家族ひとりひとりが主人公になって、それぞれの目から見た家族が描かれる連作小説。これは、今、自分が書きたいものと似通った構成だったので、選んでみた本です。角田氏を読むのは初めて。結構面白かったです。地味だけど地味じゃない。手法と構成としては、さほど珍しいものじゃなく、村山由佳氏の「星々の舟」なんかを思い出させますが、感性としては角田氏のほうが好みです。


対岸の彼女」(角田光代

上記「空中庭園」で角田氏の文章が気に入ったので、もう1冊買ってみますた。これはイいね。というか、読者を選ぶのかもしれないけれど、30代女性には共感出来る部分が多いと思う。過去に、女子高生(もしくは中学生)という生き物だったことがある人ならば、この小説の主人公たちには、少しばかりのノスタルジーを感じて、そしてそれ以上に現在への共感と、ささやかな反感を感じて、けれどその反感も共感の裏返しだったことに気付いたりして。男性には少しわかりにくい小説なのかもしれないけれど(笑)。
でも、角田氏の文章自体は、男性にも馴染めるかと思います。まだ2作品しか読んでないけれど、この人の文章は地に足がついている感じがする。なるほど、文章に骨があると、多少崩しても揺らがないのか、と勉強になりました。