男は匣を持つてゐる。 大層大事さうに膝に乗せてゐる。 時折匣に話しかけたりする。壺や花瓶でも入つてゐるのか。 何とも手頃な善い匣である。 男は時折笑つたりもする。「にゃあ」 匣の中から声がした。 鈴でも転がすやうな猫の声だった。「誰にも云はない…
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