ブラシ欲。
人間の欲望は果てしない。
基本的欲求の他にも様々な欲がある。
猫欲。もふもふ欲。シュークリーム欲。
私の中で、ここ1年ほどで急速に育ったのが、ブラシ欲だ。
ブラシ欲と言ってもなかなか伝わりにくいかもしれない。つまりは、ブラシをかけると気持ちいいよねという欲だ。いや、猫のブラッシングではない。あれはあれで気持ちいいが、我が家ではラバーブラシを採用しているので、私の「欲」であるところのブラシとは少し趣が違う。
順を追って説明しよう。
まず始まりは台所だ。スポンジの他に、昔はタワシを使っていた。亀の子だわしやそれに類するものを。ただ、私はどうにもそれがあまり好きではなかった。構造上、タワシの内側に汚れが潜り込んだ時に、タワシ自体を綺麗にすることが難しかったからだ。
……こう言うと、まるで私がきれい好きであるかのように聞こえるが、そうでもない。ずぼらだし、潔癖症の人が見たら悲鳴を上げるんじゃなかろうかという生活をしている。
ただ、だからこそ、自分で気付く程度の汚れであれば、綺麗にしたいのだ。
結局、タワシを使うのをやめ、その後に使ったナイロンタワシ的なものにも飽きた頃、100均でなにげなく買ったブラシが気に入った。プラ持ち手付の舟形をしたブラシで、ブラシ部分のほどよい弾力性が気に入った。色合いは白をベースに、ブラシ部分に黄緑色の毛束が幾つか混ざっている(水色の毛束が混ざってるものもある。毛のカットが違うがどちらも好んでいる)。
それを気に入って使ううち、さして汚れてもいないのに、ガッシガッシという感触を味わいたいがために使ってしまっていることに気付く。
そしてもうひとつ気付く。毛束の配色が歯ブラシに似ている。
以前ブログにも書いたが、私は特定の安い歯ブラシを気に入って使っている。昔は普通の値段(1本150円前後)だったが、そのうち100円前後になり、その頃からまとめ買いをしだした。そうするとその歯ブラシは少し品質が下がったのか、毛先がすぐ開くようになった。でもドラッグストアではますます安く、1本80円前後になっていたので、ますますまとめ買いをするようになった。ちなみに現在、1本50円くらいにまでなっている。底値かと思い、先日は10本ほど買ってきた。毛先はすぐ開くが、いつでも交換できる。
その歯ブラシに、台所用ブラシの配色が似ている。
ところで歯磨きについてだが、私は昔、あまり歯磨きが好きではなかった。もちろん嫌いなわけでもなかったから毎日磨いていたが、義務というか習慣というか、時々は面倒だなぁと思いながらゴシゴシやっていた。
だが、そのクソ安い歯ブラシを使うようになってから、歯磨きが少し気持ちいいと思うようになった。義務よりも爽快感を求めて、積極的に磨くようになった。
そうなると、回数も増える。以前は義務と習慣で磨いていたので1日2回。私が不眠症だった事もあり、寝る前に目が覚めるようなことをしたくなくて、夜の歯磨きをサボることも多かった。
それが「お、これ気持ちいいじゃん」と思うようになったので、1日3回、4回と増えていく。回数が増えているのも、歯ブラシが開きやすくなってる原因だと思う。
もともと舌ブラシは気持ちいいと思ってやっていたが、歯磨きの回数が増えるに従って舌ブラシの回数も増える。私にとって舌磨きは歯磨きとセットだからだ。
歯磨きの回数が増えてきた頃、なにげなく新しい歯ブラシを1本買った。もちろん家にはスペアの歯ブラシが10本以上常にあるが、それとはまったく対極に位置する歯ブラシを見て、使ってみたくなったのだ。もともと使っていたのは、ヘッド小さめで毛先の硬さは「ふつう」タイプ。メーカーによる違いのせいか、私が使っているものは「ふつう」表記ながらもややかためだ。それでガッシガッシとやるのが好きだった。
が、新しく心ひかれたのは、大きめのヘッドで細くやわからい毛がみっしり植えられているタイプ。最近よく見かける、プレミアムナントカとか、贅沢植毛ナントカ的なものだ。
プレミアムってあなた、そんな、歯ブラシに。
みたいな気持ちで使ってみたら、「ふぁぁぁぁ」となった。気持ちいい。これは気持ちいい。
結局もともとの歯ブラシの感触も捨てがたく、プレミアムタイプは夜寝る前のブラッシング、それ以外はややかための「ふつう」でガッシガッシと磨くことにしている。
そしてふと気付いたのだ。歯磨きに対する認識が変わった時期と、台所用ブラシを使い始めた時期は一致するのじゃないかと。
つまり、台所用ブラシで「磨く」楽しさを知り、かといって一人暮らしの台所ではそうそう磨くものもないので、その欲求を歯ブラシに向けていたのではあるまいか。なにせそのふたつは、配色と感触が似ているのだ。欲求の代替となってもおかしくはない。
ひょっとして自分には「ブラシ欲」があるのではないだろうか。
そう思って、お風呂場を洗うものを、スポンジからブラシに変えてみた。気持ちよかった。
次には、パソコンデスクの近くに、小さなデスク用ブラシ(毛足の長い、横向きの刷毛のようなもの)を置いてみた。以前よりはデスク周りを綺麗にするようになった。
台所ブラシ。歯ブラシ。舌ブラシ。お風呂ブラシ。デスクブラシ。
ちなみに、年末に台所ブラシを交換する際、古いのを使って床を磨いてみたら、それも気持ちよかった(疲れたけど)。
間違いない。自分には「ブラシ欲」がある。
「ブラシ欲」ってなんだ、と自問するが、ブラシを使う行為に対する欲求であるとしか言えない。
いや、待て。
私はもともと掃除が嫌いだ。歯磨きも単なる義務としか思っていなかった。そんな私にさえ「ブラシ欲」があるのだから、そうじゃない人にはもっと強い「ブラシ欲」があるんじゃなかろうか。
とりあえず実家に、件の台所用ブラシとプレミアム歯ブラシを持っていった。母親に使わせてみると、歯ブラシについては口に入れた途端に「ふあぁぁぁぁ」と言った。だが、台所用ブラシに関しては「亀の子のほうがいい」と言った。
何の検証にもならなかった。
みなさん、「ブラシ欲」ありませんか?
人間の欲求の中でも、意外と上位にくるかと思うんですが。
ホットサンド。
ホットサンドメーカーを買った。直火用のやつ。
以前、同僚が「電気式のやつはセットすれば放置できるから楽だ」と言っていたので、なるほどそれはいいなと思い、買うつもりになっていた。
が、いざ買う段になってみると、どうせならワッフル用プレートがついてるやつのほうがいいか、鯛焼きプレートも捨てがたい、いやいやシンプルな丸くて平らなプレートで美しいホットケーキを焼くのもいいよね……と、そんな罠が待っていた。
なんとなく決め手に欠けて見送っているうちに、ふと気付いた。
プレート差し替えができるような電気式のホットサンドメーカーは、1度に2組焼ける!
私は1組でいいのだ。一人暮らしだから。
なるほどこれは作戦を考えねばなるまいぞと思っていた矢先、そういえば直火用という選択肢があるなと気付いた。
この際、プレート云々は置いておく。1組用の電気式もあるにはあるが、プレートの種類は豊富ではないし。それならもう割り切って、ホットサンドのみにしたほうがいい。
ということで買いました。
レビューでさんざん、重いと言われていた品ですが、とはいってもまぁ食パン1枚サイズなので思ったよりは小さくて、そんなに重くない。
おっと、比較対象がないとサイズがわからない。
……あれ。もっとわからないか。まぁいいや。食パンサイズです。
スタンダードにベーコン、卵、チーズ、レタス。
甘い系で焼きりんご。
普段はトーストサンドにすることが多いけれど、欲張って具をたくさん挟むとまとまりがなくて食べにくい。
でも、ホットサンドメーカーでぎゅぎゅっと焼くことによって、食べやすく。
うむ。気に入りました。
Peace/War
外れた宝くじは実家に置いてきた。
計画通りなら今頃マンション購入のための契約書を見つめているか、仕事を辞めるための契約書を見つめているかのどちらかだったはずだけれど、世の中はそうそううまくいかない。億万長者になる夢は延期になった。
きっと猫パワーが足りなかったのだと思う。あの恩知らずめが。
他力本願どころか猫力に頼ろうとしてる時点で、確実に本気度は疑われる。
閑話休題。
以前やっていたオンラインゲームでは、ピースモードとウォーモードというのがあった。PCでのゲームなので、対象物(または対象人物)をクリックする必要が時折生じるが、ウォーモードでクリックするとそれは攻撃にあたる。街の中など、戦闘行為が禁止されているような場所で攻撃行為をすると、どこからともなく警備員が飛んできて、攻撃した犯人を斧で殺すのだ。警備員(Guard)が来る範囲・来ない範囲というのがあって、ゲーム内では「圏内」「圏外」と言っていた。
PK(プレイヤーキラー)が出るようなエリアに行く時には、咄嗟に「Guard!」と叫べるようにSayマクロを登録していた。PK可能エリアでも、ガード圏内であれば、被害者が叫べば来てくれたのだ。斧を持った、頼もしい鎧の騎士が。
そんなことを最近、駅の構内や地下街でよく思い出す。
傘の横持ちをしてる奴。あれはウォーモードだ。Guard!ここに悪者がいるぞ!
完全な横持ちではないけれど、傘の持ち手と開く部分との境目あたりを持って、斜め後ろに傘を突き出す奴。あれもウォーモードだ。Guard!きてくれ!殺される!
傘ばかりじゃない。
バッグを肩にかけて小脇に挟んでる女性。あれも、脇に挟んでるだけならまだしも、だいたいの女性は脇から背後にやることで、自分の前面にバッグが来ないようにしている(前面に来ると邪魔だから)。固めの素材で出来たバッグなら、それも立派なウォーモードだ。Guard!Guard!Bank(マクロミス)
街の中には鈍器使いもいる。
クソ重いキャリーバッグ。背負ってる当の本人の体よりも分厚いリュックサック。小脇に抱える小さなバッグと同じ感覚で肩から背中にまわされているトートバッグ。
とりわけ、混んでるバスの中やエレベーターの中で、リュックやバッグを肩から下ろさないやつは、人間として信用ができない。
人間は主な感覚器官が前面を向いているせいで、背中側の感覚が鈍い。例えば目の前10cmのところに見知らぬ他人がいたら嫌なものだが、背中10cmのところに他人がいても(正面に比べれば)それほど嫌ではない。
そんなところへ、厚さ20cmを越えるリュックサックがあったなら。そりゃ自分は気にならないだろう。エレベーターの中でだって、ぶつかって初めてそこに壁があることに気付くんだろう。人間にさえ、ぶつかって初めて気付くんだろう。そもそも、ぶつかってさえ気付かない奴もいる。無意識に攻撃する、これもウォーモードだ。Guard!
リュックやバッグを足元に置く、少なくとも、自分の体の前面にまわす、そんなことにすら気が回らない人間は公共の場所に出てきてはいけない。
先日、パン屋でトレイ片手にパンを選んでいたら、後ろから肩をどつかれた。「はぁ!?」と思って振り返ったら、A4サイズのバッグ(固めのエナメル素材)を脇から背中側に(自分の邪魔にならないように)斜め後ろにかけて、パンを選んでる女性がいた。
Guard!攻撃を受けている!きてくれ!
哀しいかな、現代日本では、斧を持った鎧の騎士が現れることはなかった。